寒さが和らいで来ているのを感じますが、まだ風の冷たい日があります。この時期は体調管理が重要になりますね。
さて今回も996になります。車両は996カレラの前期型です。症状は冷却水を足しても足しても2~3回走行すると冷却水が不足になるというものでした。かといって、地面に水たまりが出来るような事は無く、リフトアップをしてエンジンを下から見ても、冷却ラインに加圧テストを実施しても冷却水漏れは見当たりません。エンジンのパワーダウンは少し感じますが調子が悪すぎるわけでもありませんでした。結果からになりますが、エンジンのシリンダーに僅かなクラックが入っていたのが原因であることが判明しました。それが下の画像です。アーチ状になっているのがシリンダー部分ですが、時計の11時位置のあたりをよく見るとヒビが入っているのがわかります。
もう少し寄った画像です。今度は12時ちょっと前のあたりなりますでしょうか。アーチ状の外側は通常ですと冷却水が満たされている部分、「ウォータージャケット」と呼ばれる個所です。シリンダー内側と外側が繋がったりヘッドガスケットの抜けが発生すると、水とオイルが混ざり合うのでオイルや冷却水が白濁したようになります。時には冷却水を噴き上げてしまう事もあります。こういった事が判断材料になる訳ですが、今回は全くそういった症状が見られなかった為に、判断に時間を要しました。
今度は横から見たところです。真ん中上部のあたりがそうです。こうしてみれば、全てのツジツマが合います。クラックの量が僅かである為にエンジンの不調までは出ていなかった訳です。
シリンダー壁を常時、温水で洗っているようなもの(おそらくは霧状)でしたので、油分が少ない状態の中、ピストンが上下運動を繰り返していた為に擦り傷が付いています。ここがまた面白いところですが、ある程度燃焼が出来るレベルを保っている状態であり、排気ガスとして蒸気を排出していたと思われました。排気ガス濃度を測定すると特徴的な数値が出ますので、判断基準の一つでもあります。
996の前期型はシリンダー壁が薄く、クラックが入りやすいエンジンでした。後年は改善され厚みが変更されています。私も数台の事例を見てきましたが、酷いものになるとクラックどころでなく、クッキーを割ったようにシリンダーが「やぶけている」状態のものがありました。予防策が無いのが困ったところです。
それではまた次回です。
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